マジック・キングダムで落ちぶれて

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

有名テーマパークで巻き起こる、利権とプライドと愛憎の織り成す物語。
って描くと、なんともありがちなお話。
しかしその舞台は、無尽蔵に提供される夢のようなエネルギーが
開発され、人々は(理屈では)不死の体を手に入れている近未来世界。
そんな浅はかに考えれば”夢のような”世界で、何故そんなにちっぽけな
物語が語られるか・・・というところが、この物語の面白いところ。
そのために270P未満の少ないページの中に、湯水のようにSFガジェットが
盛り込まれまくっている。


不死を作り出すギミックは、記憶のバックアップを促成クローンに落とし込むもの。
この手の話にありがちな”はたしてそれは本人なのか!?”という哲学的な問題は、
そんな事を気にしてバックアップを取らない”石頭”はとうの昔に死に絶えた…
という事であっさり片付けられていて潔い。


水玉蛍之丞の可愛いイラストとは対照的に、イライラさせられる不器用な
1世紀以上生きたオッサンの話です。